訪日旅行において外国人の利便性をあげることは最重要ですが、決済部分の改善は利便性向上に大きな役割を果たします。外国人向けの決済分野について民間企業も大きく参入し始めています。
決済方法別に現状の動向を詳しくみていきます。
クレジットカードについて
この段落の要約日本のカード利用率は15.8%。
クレジット利用可能店舗数は18%、売上ベースだと60%。
日本クレジットカード協会は2014年、訪日外国人を対象に我が国のカード利用環境等に関する調査を実施し、“世界で最もクレジットカードが使いやすい国”に向けた課題を抽出、このたび報告書にまとめました。
「中国」「韓国」「台湾」「タイ」「イギリス」「アメリカ」の6カ国居住者で、直近3年間に訪日経験がある人(約1,000名)が対象。
日本のカード利用率は15.8%。非常に低いと言われがちですが、意外とドイツ、イタリアと同水準です。
カード利用率=カード年間取引額÷民間最終消費支出 により試算されています。
カード利用環境に不満のある人は 4%と少なく、このカード利用環境に対する満足度は観光先進国であるフランス等と比べても遜色はないことが明らかとなりました。
地域別にみれば、都市部に比べて地方部においてはカードを利用できる店舗が少ないという実態はあるものの、それが必ずしも地方部での満足度の低下にはつながっていないことが確認され、地方部においても訪日客が期待する水準は一定程度満たしているものと考えられています。
都市部の不満4% 地方部の不満5%。
クレジットカード利用可能な店舗の割合 店舗数ベース
総数 18% 売上高だと60%
→売上高が高いところの方がクレジットが利用できる故の結果です。
物品賃貸事業 58%
旅客運送事業 34%
生活関連サービス・娯楽事業 33%
宿泊事業 28%
小売業 24%
飲食サービス事業 14%
博物館、動物園等 7%
駐車場等 1%
結果として 3 人に 1 人は少なくとも1度はカードが利用できない場面に遭遇しています。この割合も満足度と同様、フランスと同等の水準であり、海外諸国と比べて高いというわけではないです。
最も多い現金支払いの次にクレジットカード利用となっており、アジア圏からの旅行者の約4割、欧米からの旅行者の約7割はクレジットカード決済を利用しています。
※観光庁「訪日外国人の消費動向 平成25年 年次報告書」より抜粋。
クレジットカードの改善点
要約クレジットカード使用可能かどうかが一目で分かることが重要。
各国で普及しているカード決済の取り入れ。
利用可能店舗の拡大
IC付カード対応決済環境
店舗の入り口等の表示
ガイドブック等での情報の充実
店員に言葉が通じること
見えない場所で処理されないように
小額利用で断られないように
ATMなどの端末の増設
自国通貨で決済できること
伝票にカード番号の一部のみ表示
スワイプせずに決済できる環境
不便だと思われがちな原因としては、クレジットカード普及率自体が低いというよりは、上記のような問題点にあります。
2014年度調査における「カード利用環境に対する不満の要因」アンケート結果によると、まず、不満の第1位となっているのが「店舗の入り口等にカードが利用可能かどうかの表示がなかったことが不満だった」という回答が42%であり、続いて、「(クレジットカードが)使えるかどうかがガイドブック・ホームページ・旅行代理店等ではわからないのが不満だった」という回答が40%で2位になっています。
VISAの調査結果においては、東京・京都・那覇の飲食店750店舗のうち、店頭にアクセプタンスマークをはっている割合は8%にとどまっています。
JCCAは具体的なアクションの方向性を定めています。「訪日外国人への適切な情報発信による利用環境の認知」という課題においては、訪日観光客がよく参照する書籍やウェブサイトへの情報の是正対応を検討しつつ、官民共同でクレジットカードの利用環境整備を進めている点を各種媒体物等で告知することを検討していく予定です。
▼多言語決済サービスCAIFS DCC
中国・台湾・韓国で普及している銀聯カード・シンハンカード・台湾SmartPayデビットサービスに対応しています。外貨建て決済を提供しています。 CAFIS Presh®はスマートフォン向け販促ソリューションであり、スマートフォンの位置情報(Wifi/GPS/Beacon)やスマホ利用者の属性情報に応じて最適なタイミングで、顧客情報やクーポン等を配信が可能です。
両替所
要約民間企業も両替業に参入できる。
両替利用環境に不満のある人は 3%
都市部の不満3% 地方部の不満4% 。
トラベレックスジャパンとビッグローブは2016/1、提携を発表。同日より、トラベレックスの外貨両替専門店38店舗で、プリペイド型データ通信専用SIMカード「BIGLOBE NINJA SIM」の販売を開始しています。トラベレックスは、国内73店舗で外貨両替事業を展開しており、主要店舗にバイリンガルスタッフも配備。
▼規制変更
日本国内では以前、外国為替および外貨両替を扱うことができるのは外国為替公認銀行に限られていましたが、1998年4月の「外国為替及び外国貿易法」の改正により規制が緩和され、一般企業でも外国為替および外貨両替を扱うことができるようになりました。
ATM
要約各銀行が訪日客取り入れのためATM工夫。
ATM利用環境に不満のある人は 4%
都市部の不満3% 地方部の不満6% 。
銀行も訪日旅行者から利益を取得できるように力を入れています。
2016/1、りそな銀行と富士通は海外で発行されたクレジットカードやキャッシュカードでお金が下ろせる新型のATMを地方銀行向けに提供します。月10万円台で利用できるなど設置コストを抑えたのが特徴です。
三菱東京UFJ銀行は外国語で対応できる接客ロボットを店舗に置く検討を進めています。セブン銀行が2015/7に、日本初、ATMを12言語に対応。
決済環境は訪日外国人にとっての旅行のしやすさに大きく関わりますので、国と民間が一致団結して整備していかなければいけません。どれだけ集めても、より心地よい滞在を生み出せないと、中長期的な訪日観光の発展は望めなくなります。
訪日旅行業全体に対しての包括的な分析記事はこちらを参照ください。