国内旅行市場におけるマクロ数値をユーザー観点で記載した「マクロ観点需要Ver」はこちらを参照ください。需要Verの方が市場規模や実際のユーザーの動向の話なので一般的に手に取りやすい内容ではあるとは思います。
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国内旅行者人数・部門別消費額等にまつわるマクロ観点の数値を解き明かす
分野別に分析する前に観光業界及びに旅行業界がどのような規模感であり、全体として近年どういった推移を辿っているのかを把握しておくことも重要だと思います。 旅行人数・業種別消費額・旅行者動向データ・オンラ ...
供給側の話は現在の実際の業者数や旅行業に活きる資格、国家の方針など、働き手目線の内容となり、観光業で働く人向けに記載した内容となります。
形態別の旅行業者数
この段落の要約
旅行会社数・従業員数ともに減少傾向。
第3種は手配旅行のみ可能。
旅行会社約1万社のうち、海外旅行可能な第1種は1割未満の数。
全体として、旅行業者数は毎年減少傾向にあり。
インターネットの普及以前は、遠隔地の宿泊施設や交通機関の手配は、旅行代理店を通さなければ困難とされていましたが、インターネットの普及以降、個人で容易に手配が可能となったことから、旅行者が、旅行代理店を経由せず、宿泊施設や航空会社などと直接契約するケースが増加しています。これらの影響も大きく受け、日本の旅行会社の取扱額は、1999年から2012年の間に、7割未満の規模へ縮小しています。
業種別業者数
ひとえに旅行会社といっても、いくつかの業種に分かれてます。
そして、募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行×海外・国内・地域限定といった観点で、各業種によって扱える旅行が異なります。
それぞれの旅行の定義や意味は、上記でリンクを貼っているマクロ(需要版)記事に記載しております。
第1種旅行業者 7%
主に海外・国内のパッケージツアーの企画実施
海外・国内の企画旅行の企画・実施、海外旅行・国内旅行の手配及び他社の募集型企画旅行の代売を行うことができます。要するに全部できる、JTBなど大手は大体これ。
観光庁長官登録(726社) ※1社平均従業員数13.0人
第2種旅行業者 27%
主に国内のパッケージツアーの企画実施。
海外「募集型企画旅行」の企画・実施を除く旅行業務を行うことができます。
海外パッケージツアーをしたければ2種ではダメ!って感じです。
都道府県知事登録(2799社) ※1社平均従業員数4.6人
第3種旅行業者 57%
主に航空機等のチケットの手配や他社の旅行商品の販売。
「募集型企画旅行」の企画・実施を除く旅行業務を行うことができます(地域限定の国内募集型企画旅行のみ実施可)
パッケージツアーはできないので基本的にお客さんに依頼を受けてから手配などを始める形態になります。
都道府県知事登録(5749社) ※1社平均従業員数4.6人
旅行業者代理業 9%
上記旅行業者が委託する範囲の旅行業務を行うことができる。どこか一社だけ所属会社を決め、その会社の商品だけを販売する会社として成立する会社です。
登録が自由なら、できれば皆とりあえず一種にしとけば良いのですが、各業種によって営業保証金や基準資産額の金額の基準値や必要な免許も変わります。
あとは地域限定旅行会社もあって名前のまま、限られた地域のみを扱う特化型です。第3種より資産額などの基準は低いです。
上記表を見れば分かる通り、日本に約1万社ある旅行会社(代理業を含む)のうち、業務範囲の限られた第3種旅行業が半数以上を占めています。海外旅行の募集型企画旅行(パッケージツアー)の企画・実施ができる第1種旅行業者は全体の7%のみです。皆に知られているような旅行会社は大体、第1種が多いです。
第1種旅行業者と旅行業代理業者は完全に減少を続けていますが、第2種旅行業者のみ2011, 2012, 2013年と3年連続して増加傾向にあり、現在の法制度になった1996年以来最高の2,869社となっています。海外旅行よりも国内旅行(訪日含む)にうまみを感じる人が増えてきています。
旅行会社労働人数
営業所数の減少に伴い、当然旅行会社従業員数も減少していっています。日本の労働人数自体が毎年減少していることを考慮しても、旅行会社労働人数の減少率はそれ以上です。
旅行業はこれまで良くも悪くも、個人のマンパワー、ガッツで成り立っていた部分も多いですが、近年のIT化・システム効率化による業務自体の削減による各社の必要人数の減少も少なからずありますね。
旅行業にまつわる資格
この段落の要約
旅行業務取扱管理者(国内/総合)は法律上、旅行会社に必要な資格であり最重要。
添乗員になるための旅程管理主任者資格は旅行業従事者のみ受講資格あり、合格率は非常に高い。
後半の3つは観光情報にまつわる資格となる。通訳案内士は訪日外国人に向けて
続いて、旅行業界に従事するならば持っておきたい資格、持っていても悪くない資格の紹介をします。就活生や内定者はもちろんのこと、すでに働いている人もどんな資格があるのか参考までにご覧ください。
・旅行業務取扱管理者(総合/国内)
・旅程管理主任者資格(総合/国内)
・AXESS実用検定試験
・旅行地理検定
・通訳案内士試験
・世界遺産検定
旅行業務取扱管理者(総合/国内)
旅行業務取扱管理者資格は、旅行業界で唯一の国家資格です。
旅行会社や旅行代理店などは、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を配置することが旅行業法で定められているため、旅行会社にとってはもっとも重要な資格。絶対必須、ないと営業ができない。資格保有者は毎月の給料がUPするという会社も多いほど重要。
試験内容も、旅行業法・約欺の概念・内容、宿泊、交通に関する料金掲載・知識など、旅行会社で働くにあたって知っておきたいものばかり。国内と海外で種類が違い、国内旅行専門の会社であれば「国内旅行業務取扱管理者」でOK、海外も取扱う場合は「総合旅行業務取扱管理者」が必要となります。
テストは国内が9月、総合が10月で年に各1回ずつ実施されます。一定の年数以上を旅行会社で勤務した人は一部科目免除あり。
総合の2009年の合格率は4科目受験者のみで15.1%、一部免除者を含めた全体で25.5%。
旅行業務取扱管理者試験の詳細については下記記事を参照ください。
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旅行業務取扱管理者とは?難易度や免除要件などの資格概要まとめ
旅行関連唯一の国家資格である「旅行業務取扱管理者試験」の難易度や合格率について解説していきます。(筆者は2016年度で旅行業務取扱管理者を取得しました) 旅行業試験の難易度や対策方法の解説とともに、免 ...
旅程管理主任者資格
添乗員が持つ資格です。一つの旅行につく複数の添乗員の中で最低一人は持っておく必要があるというルールなので、誰かの同行であれば資格なくても添乗員にはなれます。旅程管理主任者資格は、旅行会社のパッケージツアーや団体旅行に同行し、旅行者の案内や旅程管理者をするツアーコンダクター(添乗員)として働くのに役立つ資格です。
取扱管理者同様に国内のみ添乗できる「国内旅程管理主任者」と、国内、海外ともに添乗することのできる「総合旅程管理主任者」の2種類があります。資格取得には、国土交通大臣登録の機関による「旅程管理研修」を修了することと、テストの合格、また、旅程管理業務の実務経験が必要になります。
総合 約70~80%、国内 約90%でテストの合格率は非常に高め。時間を割いて研修などに参加すれば基本的に取れるもの。
現に旅行業に登録している人のみが受講資格あり。取扱管理者は他業種の人でもOK。
AXESS実用検定試験
AXESS(アクセス)とは、旅行・航空業界で使われるコンピュータによる予約システム(CRS)のこと。世界中の航空会社やホテルなどとつながり、航空座席の予約や発券業務、ホテルの予約などの操作ができるため、多くの旅行会社が使用しています。
この操作技術を認定するのがAXESS実用検定試験。資格を持っているから何ができるとかはないですが、知識としてはとても役に立ちます。資格は勉強のためのペースメーカーとしても良いと思います。
航空券の予約・発券、スケジュールや運賃などの情報確認、ホテルやレンタカー、パッケージツアーの予約、その他旅行客の案内業務全般にも活かせる内容の資格なので知識としては強いです。これも試験科目は「国内全般」と「国際予約」の2種類あり。さらに1~3級があります。合格率は非公開。
旅行地理検定
旅行地理検定試験は、旅先の知識を深め、より楽しく、充実した旅行にすることを目的にした試験。国内外の地勢や環境、観光地や観光資源の知識について認定する試験で、通称「地理検」とも呼ばれている。旅行業界に携わる中で観光情報や各地の知識は必須のため役には立つ資格内容です。お客さんと接する人は知識の信頼感が増します。
これも国内と海外に分かれており、それぞれ1級から4級まであり。
合格率は1級:16.1%、2級:35.4(76.1)%、3級:31.5(40.6)%、4級:61.2(61.9)%、ほど。
()内はインターネット受験。2~4級はインターネットで受験可能。
通訳案内士試験
2015年4月1日現在の登録者数は19,033人。
通訳案内士法の規定により、「報酬を受けて外国人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する案内をする業を営もうとする者は、通訳案内士試験に合格し、都道府県知事の登録を受ける必要がある」と定められています。挙げている中でもダントツで難易度の高いテストとなります。
通訳案内士試験の外国語の種類は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語となっています。
2015年 英語 受験者数8491人 最終合格者数1822人 合格率 21.5%
世界遺産検定
2015年世界遺産は1007件登録されています。若干地理検定に似ていますが、その世界遺産に特化した版です。世界遺産のほとんどは有名な観光地となっているし逆に、世界遺産登録をきっかけに観光地化する遺産が多いです。
それほど観光にとって影響力のある世界遺産なので持っていると旅行業界でも役立つ知識です。「持続可能な観光(Sustainable Tourism)」の重要性の上昇とともに、観光業界においても人材育成の一環として世界遺産検定の団体受検を実施する会社が増えているそうです。
2006年に始まって以来、のべ10万人が受検し、5万人以上が認定されています。第1級の認定率が30%前後。マイスターが最難関で1~4級あり。
観光業に関する国家の方針
では、ここからは少し視点を変えて、観光業について国家が掲げる方針・実際の取組み、及び実現させるための体制について述べていきます。
観光庁について
2008年10月1日に国土交通省の外局の1つとして設置されました。日本の観光立国の実現に向けて、魅力ある観光地の形成、国際観光の振興その他の観光に関する事務を行うことを任務とする(国土交通省設置法第43条)。
観光庁の一般職の在職者数は2011年1月現在、観光庁全体で101人(うち女性6人)で、国土交通省の全在職者6万728人(5169人)のうち約0.17%(0.12%)を占める。定員は省令の国土交通省定員規則によって、2012年4月現在、102人と定められている。
観光庁の理念
「観光立国の実現」を通じて、我が国経済社会の活性化、活力に満ちた地域社会の促進、国際相互理解の増進や国際平和の実現、健康で文化的な生活の実現などに貢献する。このため、具体的な目標を定めて、以下のとおり、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」に取組む。
・我が国の魅力を内外に発信する。
・国内外の交流人口を拡大し我が国や地域を元気にする。
・地域の自立的な観光地づくりを応援する。
・観光関連産業を活性化する。
・すべての人が旅行しやすい環境を整備する。
<観光庁が主導的な役割を果たすべき主な施策>
1.国内外から選好される魅力ある観光地域づくり(観光地域のブランド化・複数地域間の広域連携等)
2.オールジャパンによる訪日プロモーションの実施
3.国際会議等のMICE分野の国際競争力強化
4.休暇改革の推進
→観光立国推進基本計画に基づき実施
政府の観光面における主な取組み・年表
2003年 小泉純一郎総理が「観光立国懇談会」を主宰
ビジット・ジャパン事業開始
2007年 観光立国推進基本計画を閣議決定
2008年 観光庁設置
2009年 中国個人観光ビザ発給開始
2012年 観光立国推進基本計画を閣議決定
2013年 「日本再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定
「日本再興戦略-JAPAN is BACK- 」を閣議決定
ビジット・ジャパン事業
ビジット・ジャパン事業(VJ)とは、
訪日外国人旅行者の増加を目的とした訪日プロモーション事業。JNTOは政府観光局という専門的・中立的な立場を活かし、VJの実施においてはJNTOの海外事務所が、各市場の最前線で中核的な役割を担う。
VJ事業対象市場である韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、オーストラリア、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムを中心に、長年にわたって培ってきた海外における事業展開のノウハウ及びネットワークを通じて、市場の最新動向・ニーズを継続的に収集・分析し、それらをタイムリーに提供することにより、VJ事業をはじめとする国の観光政策の立案。
日本政府観光局について
観光庁が「(独)国際観光振興機構(通称:日本政府観光局(JNTO))」を所管しています。(「独立行政法人国際観光振興機構法(平成14年法律第181号)」)
日本政府観光局(JNTO)は、我が国の政府観光局として海外における観光宣伝、外国人観光旅客に対する観光案内、その他外国人観光旅客の来訪の促進に必要な業務を行っています。
観光立国推進基本計画
政府は、観光立国の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立国の実現に関する基本的な計画を定めなければならないです(第10条第1項)。観光立国推進基本計画は、(1)観光立国の実現に関する施策についての基本的な方針、(2)観光立国の実現に関する目標、(3)観光立国の実現に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、(4)そのほか、観光立国の実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を定めます。
観光立国推進基本計画の内容
現在の「観光立国推進基本計画」は2012年3月30日に閣議決定されたもので、2007年6月29日に閣議決定された最初の計画が5年の経過期間を経て改訂されたものです。
計画期間は5年で、基本的な目標として以下の7項目が掲げられています。
これらの数値が現状、観光業において国家が目標としている数値なので重要です。
1.国内における旅行消費額
2016年までに30 兆円にする。【平成21年実績:25.5 兆円】
2.訪日外国人旅行者数
2020年初めまでに2,500万人とすることを念頭に、2016年 までに1,800万人にする。【平成22年実績:861 万人】
3.訪日外国人旅行者の満足度
2016年までに訪日外国人消費動向調査で、「大変満足」と回答する割合を45%、「必ず再訪したい」と回答する割合 を60%とすることを目指す【平成23年実績:「大変満足」 の回答割合43.6%、「必ず再訪したい」回答割合:58.4%
4.国際会議の開催件数
我が国における国際会議の開催件数を2016年までに5割以上増やすことを 目標とし、アジアにおける最大の開催国を目指す。【平成22年実績:国際会議の開催件数741件】
5.日本人の海外旅行者数
2016年までに2,000万人にする。
【平成22年実績:1,664万人、平成23年推計:1,699万人】
6.日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数
2016年までに年間2.5泊とする。【平成22年実績:2.12泊】
7.観光地域の旅行者満足度 - 観光地域の旅行者の総合満足度
について、「大変 満足」と回答する割合及び再来訪意向について「大変そう思う」と回答する割合を2016年までにいずれも25%程度にする。【実績値なし】
旅行業界マクロ観点のまとめ
以上が事業者数や国家対策における供給側視点の記述となります。かなり働き手視点の記事ではありますが、旅行業で働こうとしている人、働いている人に対して参考になる記事となっていれば幸いです。
旅行業界全体に対しての包括的なまとめ記事はこちらを参照ください。1番見られている記事です。
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