中長期的にファンとなるユーザーを獲得しやすい集客チャネルとして、人気なオウンドメディアについて徹底解説します。
オウンドメディアが人気となる昨今の時流から、実際の作り方まで初心者向けに解説しています。
オウンドメディアとは
オウンドメディア(ownedmedia)とは、ECサイトなどを運営する会社が自社で運営する情報発信メディアのことです。広告媒体と異なり、制約を受けることなく自由に自社の魅力やブランドを表現でき、潜在顧客を中長期的に育てていくことができます。
広義の意味では自社が持つコンテンツとして紙媒体やメールなども含まれますが、実際に現場で使われる狭義の意味のオウンドメディアはウェブマガジンを指します。
ペイドメディアとの違いを意識する
オウンドメディアの意義を理解するのに欠かせない概念がトリプルメディアです。トリプルメディアとは次の3つの媒体のことを指し、オウンドメディアもこのうちの1つです。
ペイドメディア(paid media)
アーンドメディア(earned media)
オウンドメディア(ownedmedia)
どこから自社サイトに流入させるのかといった概念です。
1.ペイドメディア…広告です。クリック単価制の検索連動型広告や掲載費により露出できるマスメディアなど含む、広告費を支払うことで流入を獲得する従来の媒体です。
2.アーンドメディア…SNSです。ユーザーと一緒に口コミや評判を形成していき、ユーザー自身が拡散もしてくれる媒体です。信頼や評判をearned(=獲得する)という意味合いです。
3.オウンドメディア…自社が保有するメディアです。自社サイトで補えない要素を補完してくれます。
従来、1.の広告費を支払って獲得をすることが主流でしたが、近年はユーザーのITリテラシーも高まり広告嫌いな人も増えています。今では2.と3.も上手く組み合わせたマーケティング手法が必要です。
それぞれの役割としては1.多くに認知させられる、2.情報を拡散してもらえる、3.ファンを形成する、といった構造がベストです。
オウンドメディアが人気な理由
オウンドメディアが昨今これほどまでに人気な理由の要素をいくつか挙げます。オウンドメディアには検索エンジンからの流入を目的としたメディアと、SNSからの流入を主な目的においたメディアがありますが、今回は前者のパターンのメディアを軸として解説します。
①広告だけでは獲得できないユーザーの増加
かるく上述しましたが、従来の明らさまなプッシュ型広告を嫌うユーザーも増え、ユーザーにとって本当に有益なコンテンツを提供して集客をすることが重要になってきました。
②GoogleのSEO対策がコンテンツ重視に強化
SEO対策は一昔前までは被リンクを集めることが効果的でしたが、Googleのアルゴリズム精度が向上したこともありコンテンツそのものの良し悪しで順位を判断できるようになりました。SEO対策にもコンテンツの質がより重要になったので、質を大切にするオウンドメディアとの相性が上がりました。
③SNSとしての相性
検索エンジン以外の大きな集客チャネルとしてSNSがあらわれ、ユーザーにとって有益な記事は拡散されやすくなりました。オウンドメディアはSNSマーケティングとも相性が良いです。
④SEO対策のロングテール獲得
SEO対策において自社のECサイトだけでは取りきれないニッチなクエリに対しても、オウンドメディアの記事を用意することでロングテールキーワードも拾えます。検索語句の多様性は加速しており、ロングテールを拾うことのインパクトは増しています。
⑤自社の資産として永続的に保持可能
毎回費用を支払う必要のある広告と異なり、オウンドメディアは一度作ってしまえば半永続的に自社の資産として保持し続けられるので投資対効果が高まりやすいです。
オウンドメディアのメリットとは
自社サービスやECサイトを運営する企業がオウンドメディアを運用することの実際のメリットを紹介します。
・広告費ゼロでCVを獲得できる
1度製作してしまえば永続的に集客装置となってくれるので、オウンドメディアでの自然流入を増やすことで、広告費をカットすることができます。
・意図したブランディングができる
媒体に縛られるずに自由な表現ができるので、企業の意図した世界観を創っていけます。関連のお役立ち情報などを配信することで、「その商品といえば○○」というブランディングも構築しやすいです。
・ユーザーのロイヤルティを向上できる
有益な情報を発信することで顧客からの信頼度も増し、他社との検討時にもその信頼は正なる方向へ寄与し、間接的なCV効果も生むことでしょう。またオウンドメディアによる情報発信で1度購入してくれた顧客とも接点を持ち続け、リピーターのプールにも繋がります。
オウンドメディアのデメリットとは
一方で、オウンドメディアにはデメリットもあるので、しっかりと把握した上で自社での攻め方を考えていく必要があります。
・時間と労働力がかかる
質の高いオウンドメディアを作るには、多くのリソースが必要となります。SEOでの効果が出るにはある程度時間がかかりますし、何より労働力も要します。オウンドメディアを育てることは、SNSアカウントを育てることよりも時間がかかります。
・マネタイズが難しく、費用対効果が合わないこともある
上述したようにオウンドメディアでは多くの時間と労働力がかかるということは、その分費用も結構かかります。一方で直接のマネタイズポイントの設計はなかなか難しく、費用対効果が合っていないケースも多いです。直接的な金銭的な利益以外の目的を最初から設定しているメディアが多いです。
オウンドメディアの成功事例
それぞれの会社がオウンドメディアに求める目的を達成している、成功しているといえるオウンドメディアの事例をいくつか紹介します。まずこれらのオウンドメディアの共通点として上げられることをまとめます。
・自社の強みを活かした目的のあるコンテンツ
・サイトを表すキャッチコピーが分かりやすい
・ターゲット層が自社顧客と同じ
・オリジナルコンテンツである
・各記事の細部までメディアの軸や特徴が定まっている
・更新頻度が高い
これ以外での裏側でいうと、運営体制の構築が非常に肝です。しっかり共通認識の目的を持って、経営判断としての許容度合いなどが試されます。
オウンドメディア事例①:サイボウズ式
サイボウズ式は"「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト"です。 現代の働き方の本質的な課題について訴求した記事が多く、シェアされやすいです。
サービスや企業の認知度向上につながっており、サイボウズという会社が目指している世界観を伝えることに成功しています。採用の面においても大きな影響をもたらします。またユーザーとのコミュニケーションも強く意識されたメディアです。
サイトURL:サイボウズ式
オウンドメディア事例②:CAREER HACK
CAREER HACKは"WEB・IT業界で働く人々の人生を少し豊かにするメディア"です。転職サービスを運営するエン・ジャパン株式会社のオウンドメディアです。流動的な転職をしやすいビジネスマン層をターゲットとした、バズ度の高い記事は頻繁に公開しています。注目度の高いサービスのインタビュー記事も多数で、その時のトレンドを抑えたバズりやすいコンテンツ生成が行われています。会員登録に繋げて、メルマガ配信などからCVに繋げています。
サイトURL:CAREER HACK
オウンドメディア事例③:LISKUL
Webマーケティングノウハウメディア「LISIKUL」は、広告代理店であるソウルドアウト株式会社が運営するオウンドメディアです。LISIKULは上述の2つよりも直接的なCVにより寄与しやすいです。
自社の商材ともなる広告関連のノウハウを敢えて無料で共有して、新規顧客やリードの獲得に繋げています。ノウハウ発信型メディアなのでSEOに強く、自社の顕在顧客が情報を求めて検索した時のリーチ力は非常に強いです。
サイトURL:LISKUL
オウンドメディア事例④:たびらい
たびらいは、沖縄・九州を主軸とした旅行会社「株式会社パム」が運営するオウンドメディアです。沖縄や九州エリアの旅行術や観光情報の発信をしており、ディープなローカル情報も取材付で製作しています。
観光情報をフックに流入したユーザーに対して、メディア内で予約導線を適切に設置しています。アクティビティ予約やレンタカー予約とCVポイントを多く持つたびらいだからこそ、オウンドメディアの価値がより高まっています。観光情報を検索した時に多くヒットして目に入るので、ツアー検討の際の促進にも役立ちます。
サイトURL:たびらい
オウンドメディア事例⑤:北欧、暮らしの道具店
「北欧、暮らしの道具店」はオンラインでアクセサリーや小物を販売するネットショップです。同名の「北欧、暮らしの道具店」というオウンドメディアでもあります。
作り手側の情熱や過程が伝わる記事など作り込まれたものが多く8年も運営されており、他のネットショップがなかなか提供できない魅力訴求ができています。
サイトURL:北欧、暮らしの道具店
オウンドメディアの作り方
では、これからオウンドメディアを始めようかと思っている方、または本格的な運用を改めて始めようと思っている方向けに、オウンドメディアの作り方の概要を解説していきます。
1. 目的・テーマ・ターゲットを決める
コンセプト設計そのものになります。オウンドメディアを通して、自社ビジネスにどのような影響を与えたいのか?、そのためにはどういうユーザーにリーチしたいのか?、そしてどういう印象をつけたいのか? を徹底的に言語化して始めましょう。ここは十分に時間をかけるべきです。
ここで決めた軸が、オウンドメディアの細部のデザインや文章の言い回しなどに反映されることになります。
2.サイト設計
コンテンツ制作に入る前に、まずコンテンツを入れる箱を設計しましょう。サイト設計において決めるべき大きな点としては以下の3点です。
・ドメイン
・サイトデザイン
・サイトのURL構造
ドメインは自社ECサイトのサブドメインかサブディレクトリで運用することが一般的です。そうすることでオウンドメディア内のコンテンツの価値がECサイトにも伝わり、逆に既存ドメインを使用することでオウンドメディアのSEO効果も上がりやすいです。より分かりやすいサイトにするために、URL構造も大事で深すぎる階層はできないようにしましょう。デザインに関しては下記で詳細解説します。
3. KPI設定
オウンドメディアは労力と時間などコストがかかります。しっかりと目的から落とし込んだオウンドメディア自体のKPIを設定しておくことが重要です。軸が通った運用体制で継続していくためには不可欠なポイントです。
記事のタイプごとにCTAポイントは変わり得るので、各記事単位で目標とするものは明確である方が良いです。また最終的な購入だけでなく、オウンドメディアの価値をより正確に測り最大限活かすにはスモールCV設定を用意しておくことも必要です。
4. キーワード選定
「検索エンジンorSNS」のどちらのチャネルでメイン集客したいのかで、ここからはやや進め方が変わりますが、検索エンジン集客(SEO)メイン想定で進めていきます。
どのようなキーワードを検索したユーザーに見てもらいたいのかを決めます。上位表示を取得したいキーワードが決まれば、各キーワード用の記事を製作していきます。販売サイトと同ドメインで行う場合、販売サイトで狙うべきキーワードと被らないように調整が必要です。オウンドメディアは単体のアクセスを上げることが目的ではないので、全体戦略から紐解いた本来の目的を果たせるキーワード選定が必要です。
5. ユーザーに有益なコンテンツ作成
選定したキーワードで上位表示させるための記事を実際に製作していきます。より上位させるために必要なことはシンプルで、「検索ユーザーのニーズにもっとも的確に答える記事」であることです。つまりユーザー視点でもっとも有益な情報を製作することです。
とはいえ、SEOの詳細は奥深くさすがにイメージ湧きにくいと思うので、SEO対策に関しての詳細記事はこちらを参考ください。
6. 計測
オウンドメディアは中長期的に育てていくものなので、計測も重要です。常に新規記事製作と並列で既存記事の改善は非常に重要です。1度リリースした後の実績やユーザーの反応を見て、常にブラッシュアップしていき、本来の目的をより実現させられるようにしていきましょう。
もっとも使われているWeb計測ツールのGoogleアナリティクスの解説はこちらで
オウンドメディアのデザイン
オウンドメディアのデザインの良し悪しは目的や業種、そのサービスのブランド色にもより、大きく異なります。なかでも大体の場合で共通して良しとされるデザイン設計をいくつか紹介します。大枠デザインはブランドそのものなので、今回は細かい各論が多くなっちゃっています。
・SP(スマートフォン)メインでデザイン設計構築する
・ECサイトとヘッターとフッターは同じにしていることが多い
・ECサイトと同じトンマナに
・トップページボタンを押すと、販売サイトへ
オウンドメディアの内容がサービス直結ではない場合は、オウンドメディアを1つのサイトとして完結させている方が良いです。
・SNSシェアボタンの設置
・販売サイトへの導線設計
各記事の下やサイドバーにCTA(コールトゥアクション)が付けられている
オウンドメディアまとめ
オウンドメディア製作・運用には体力が必要なので、目的を明確に定めることが非常に重要です。軸に沿った良質なコンテンツを製作することで、自社ブランドイメージを強化していき、ファンとCV獲得にも繋げられる自社の集客チャネルとなります。
オウンドメディアをより検索エンジンで露出させるためのSEO対策はこちらで解説しています。
Webマーケティング全体像を把握するための初心者向けの記事はこちらで解説しています。Webマーケティング導入編として良く見られている記事です。