【徹底解説】誰でも分かる旅行業界の動向まとめ(2020年/国内旅行編)

投稿日:2020年6月24日 更新日:

国内旅行市場における旅行業界の全体像を掴むための記事を1つにまとめました。旅行業界のなかでもどのような領域があるのか明確化し、各分野のマーケットサイズ、各企業の動向を紹介していきます。

訪日旅行(インバウンド)市場における日本の旅行業界の全体像や取組み、主要会社の近年の動向はこちらの記事にまとめています。

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旅行業の前提確認

まずはじめに旅行業の定義のおさらい。「旅行者の依頼により運輸手段・宿泊施設の予約・手配、及びパッケージツアーにおいては旅程管理をすること」が旅行業の正確な意味です。JTBなど一般的な旅行会社の取組みのことをさします。

旅行会社の分析が中心とはなりますが、航空会社・鉄道・宿泊施設などのサプライヤー(素材提供側)、現地ツアーなどのコンテンツ販売会社も含め、観光業界全体の記述を行っていきます。

故に厳密に言うと、旅行業界のみではなく観光業界全体像の徹底解説となります。一般的に旅行業とまとめて言われることが多いので、広義の観光業界の意味を含む旅行業界として解説を進めていきます。

各項目における、主要会社の各社特徴や近年の業績・動向の分析を記した記事も全項目に用意しております。それぞれの分野ごとにリンクを貼っておりますので、興味ある分野に関しては詳細記事も参照ください。

各数値データは2017年時点の数値がメインになっています。2019年時点で大きく数値傾向の変動があるものは最新事項を記載しています。

2020年はコロナ影響でいずれの数値も異常値となりそうです。

マクロ観点でみる旅行業分析

まずは何事もマクロ観点が必要。各分野に従事している人も今自分はどの位置にいるのか俯瞰的に把握することで、やりがいや効率性も変わってくると思っています。需要側と供給側に分けて旅行業界のマクロ分析をしていきます。

市場規模や旅行者の行動データ分析

日本人の国内旅行の延べ旅行者数は5億9,522万人回(前年比5.7%減)(2014年)であり、その内、宿泊旅行の延べ旅行者数が2億9,734万人(前年比7.2%減)となっています。

近年、国内旅行人数は減少傾向にあり。
※上記数字は一人の人が年に5回旅行すると5人分とカウントされるので総人口を超えることになります。

人口減少に伴い、日本人の国内旅行消費額も減少傾向にあります。2013 年の国内における観光消費(内部観光消費)は23.6 兆円であり内訳は下記。

日本人国内宿泊旅行     15.8兆円
日本人国内日帰り旅行  4.8兆円
日本人海外旅行(国内分)  1.4兆円
訪日外国人旅行等         1.7兆円
(+海外旅行(海外消費分)3.2兆円)

2013年生産波及効果 48.8兆円となっており399万人の雇用誘発効果があると推計されています(訪日・海外旅行分含む)。ここの数字はより詳細に落とし込む必要がありますが簡単に言うと対名目GDP5.2%。旅行業界が日本経済に与えている影響は非常に大きいのです。

支出のタイミング別で見てみるとこんな感じです。

旅行前支出 3,3兆円
(→「土産代・買物代」が7割)
旅行後支出 1900億円
(→ 写真の現像などが含まれる)
旅行中支出 18.4兆円
旅行会社収入  0.5兆円
交通費     7.8兆円
宿泊費     3.3兆円
別荘の帰属家賃 0.4兆円
飲食費     2.3兆円
土産代・買物代 2.9兆円
入場料・娯楽費 1.2兆円

※旅行会社収入は取扱高ではなく旅行会社に残る利益ベースの換算です。それぞれの意味合いなど詳しくは3.旅行会社項目で。

旅行者のタイプ別にみると、家族・カップル旅行が約6割を占めます。
目的地までの移動手段は自家用車33%、列車28%、レンタカー11%、飛行機6%となっていますが、日帰り旅行を含むデータなので車の割合がかなり高く出ています。鉄道と飛行機の割合は新幹線:飛行機=4:1で各社の公開データから紐解いてもこんな割合なので正しいデータでしょう。

あと、団体旅行と個人旅行の割合は、団体:個人= 23% : 76%です。
さらに予約方法の内訳は、

旅行会社を利用 29.4%

ネット専用旅行予約サイト 24.5%

宿泊施設へ直接予約 36.5%

となっており、OTA(ネット専用旅行予約サイト)の利用が急激に伸びています。

県別宿泊人泊数は東京が1番多く10%ほどを占めます。出張者も含まれていますので大きいな要因となっています。

北海道、大阪が5%強で2、3位。続いて、静岡、千葉、神奈川の関東圏。7位沖縄、8位長野、9位愛知、10位が九州。次が京都、兵庫。19位の広島以外の中四国は低いです。東北エリアは宮城、福島などが高め。人泊数なので滞在期間の長さも数値に影響を与えます。 ※北海道は道民による宿泊が多いことも考慮必要。

マクロ観点最後の項目として旅行業界でのオンライン率について記載します。インターネットの影響はどの業界でも無視することはできませんが、旅行業界も大きく変化していっています。

2014年地点で、

日本のオンライン旅行市場規模は2兆9千億円(3年前比23%増)
オンライン販売比率は33%となります (2014年データ)

※宿泊施設・輸送手段(飛行機/鉄道)の合計販売額は9兆円弱で、この販売額を分母と定めたデータです。

2.9兆円のうち旅行会社全体のオンライン販売額は1兆5699億円となっています。残りはJALやJRなどの輸送会社が自社のWebページで直接販売しているもの。

TTA(既存リアル旅行会社)のオンライン販売強化

ダイナミック・パッケージ販売が増加

海外OTAサイトの影響

主に上記の3つの影響でオンライン率が増加していると推測されます。

ちなみに、この旅行オンライン予約のうちのモバイル率は38.9%です。
国内すべてのEC取引のモバイル利用の割合は46.8%なので旅行分野は他業界よりも少しモバイル率が低めとなっています。但し旅行はかなり単価が高いので、スマホで予約を済ませることに不安を覚えることは当たり前なのでモバイル利用率がやや下がるのは自然だと思っています。

マクロデータの参照元

旅行人数・宿泊人泊数の推移・経済波及効果は観光庁・JATA(一般社団法人 日本旅行業協会)の発表資料のデータにより作成。消費額の内訳はTSA表を参照。
※TSA:Tourism Satellite Account(旅行・観光サテライト勘定)

市場規模・旅行者人数・旅行消費額などの詳細情報はこちらの記事を参照ください。

国内旅行者人数・部門別消費額等にまつわるマクロ観点の数値を解き明かす

分野別に分析する前に観光業界及びに旅行業界がどのような規模感であり、全体として近年どういった推移を辿っているのかを把握しておくことも重要だと思います。 旅行人数・業種別消費額・旅行者動向データ・オンラ ...

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旅行業者数・必要資格など労働者視点データ

まず旅行会社が販売する旅行の種類は次の3つに分かれます。逆に3つにしか分かれません。この3つのうち扱う種類によって、旅行会社が必要となる資格も変わります。

募集型企画旅行

旅行会社が、あらかじめ旅行計画を作成し、参加者を募集して実施する旅行。いわゆる一般的なパッケージツアーは全て募集型企画旅行です。募集型企画旅行を企画した旅行会社には、旅行中の事故などに対して補償金がでる「特別補償」と、旅行がパンフレットどおりに催行されないときに変更補償金が出る「旅程保証」が義務付けられています。

受注型企画旅行

旅行者の依頼に基づいて旅行会社が旅行計画を作成する旅行。旅行者の依頼が先。修学旅行とかは受注型となります。旅行代金には企画料金が含まれます。募集型と同様、特別補償、旅程保証の対象。

手配旅行

旅行者の依頼で飛行機やホテルなどの手配だけを代行する旅行。つまり旅行会社は消費者の委任を受けて代理で取り次ぎ行為を行うだけ。特別補償、旅程保証などの責任もなし。

主要旅行会社の種類別の取扱高。(2013年・国内旅行のみ)

2013 2012
募集型企画旅行 49.0% 52.5%
受注型企画旅行 18.6% 17.5%
手配旅行 32.4% 30.0%

受注型企画旅行の割合が徐々に増加しています。

法律的に旅行会社は次の種類に分かれます。JTBや日本旅行など誰もが知っているような大手旅行会社はすべて第1種です。

▼第1種旅行業者 会社数のシェア7%

海外・国内のパッケージツアーの企画実施など全て実施可能。
観光庁長官登録(726社)
※1社平均従業員数13.0人

▼第2種旅行業者 会社数のシェア27%

主に国内のパッケージツアーの企画実施。海外の「募集型企画旅行」だけは実施できないです。
都道府県知事登録(2799社)
※1社平均従業員数4.6人

▼第3種旅行業者 会社数のシェア57%

主に航空機等のチケットの手配や他社の旅行商品の販売。国内・海外問わず「募集型企画旅行」はできないです。
都道府県知事登録(5749社) ※1社平均従業員数4.6人

▼旅行業者代理業会社数のシェア9%

上記旅行業者が委託する範囲の旅行業務を行うことができます。

旅行会社約1万社のうち、海外旅行ツアーが可能な第1種は1割未満です。

全体としても、旅行会社数・従業員数ともに減少傾向にあります。2008年以降旅行業者数は毎年減少傾向にあります。インターネットの普及でツアー利用ではなく個別手配が容易にできるようになり、旅行代理店を経由せずに旅行に行く人が増えている証ですね。

ここからは数値的な話からは少し離れ、供給側の視点ということで、旅行業界で必要な役に立つ資格も記載しておきます。

旅行業務取扱管理者(総合/国内)

国家試験。旅行業務取扱管理者(国内/総合)は法律上、旅行会社運営に必須な資格であり最重要。資格保持者には給与アップさせている旅行会社が一般的なほど必須な資格です。国内/総合ともに僕も取得しています。

旅程管理主任者資格

添乗員になるための旅程管理主任者資格は旅行業従事者のみ受講資格あり、合格率は非常に高いです。ツアー参加の添乗員のうち一人はこの資格を持っていないとダメなので添乗員ツアーがある会社では絶対に優遇されます。逆に言うと他の同行添乗員が持っていれば、自分は持っていなくても添乗はできます。

AXESS実用検定試験

AXESS(アクセス)とは、旅行・航空業界のコンピュータによる予約システム(CRS)のことです。この操作の実用試験です。

旅行地理検定

通訳案内士試験

世界遺産検定

これら3つは観光情報にまつわる資格となります。通訳案内士は訪日外国人に向けてですが、これは取得もなかなか難しい。

マクロ観点の最後に、観光業に関する国家の方針を軽く記述します。

観光庁と、観光庁管轄にある日本政府観光局(JNTO)が中心となり、日本が観光立国となるべく活動しています。
5年ベースで策定される「観光立国推進基本計画」に沿い動いています。現状は2012年3月30日に閣議決定されたもので、2007年6月29日に閣議決定された最初の計画が5年の経過期間を経て改訂されたもの。

観光立国推進基本計画で掲げられる7項目をまとめると、こんな感じ。これが今の日本国の観光分野における公式な目標数値。頭に入れておいても悪くはない。

1.国内における旅行消費額
2016年までに30 兆円にする。 【平成21年実績:25.5 兆円】

2.訪日外国人旅行者数
2020年初めまでに2,500万人とすることを念頭に、2016年 までに1,800万人にする。【平成22年実績:861 万人】

3.訪日外国人旅行者の満足度
2016年までに訪日外国人消費動向調査で、「大変満足」と回答する割合を45%、「必ず再訪したい」と回答する割合 を60%とすることを目指す【平成23年実績:「大変満足」の回答割合43.6%、「必ず再訪したい」回答割合:58.4%

4.国際会議の開催件数
我が国における国際会議の開催件数を2016年までに5割以上増やすことを 目標とし、アジアにおける最大の開催国を目指す。【平成22年実績:国際会議の開催件数741件】

5.日本人の海外旅行者数
2016年までに2,000万人にする。【平成22年実績:1,664万人】

6.日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数
2016年までに年間2.5泊とする。【平成22年実績:2.12泊】

7.観光地域の旅行者満足度 - 観光地域の旅行者の総合満足度について、「大変 満足」と回答する割合及び再来訪意向について「大変そう思う」と回答する割合を2016年までにいずれも25%程度にする。  【実績値なし】

マクロ観点(供給)に関しての詳細情報はこちらの記事を参照ください。

旅行業界で働く人向け!旅行業者数・労働人数・必要資格など供給側マクロ観点分析

国内旅行市場におけるマクロ数値をユーザー観点で記載した「マクロ観点需要Ver」はこちらを参照ください。需要Verの方が市場規模や実際のユーザーの動向の話なので一般的に手に取りやすい内容ではあるとは思い ...

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旅行業界の現状:旅行会社分析

通常旅行会社(TTA)とネット専門旅行会社(OTA)に分けて記述を行っていきます。
まずはそれぞれの意味。

TTA(Traditional Travel Agent)
JTBなどの店舗を持った形態で旅行業を行っている既存旅行会社。 ※現在、店舗を持っていなくても元々店舗販売をメインに始めた旅行会社はTTAに含むこともあります。

OTA(Online Travel Agent)
インターネット上だけで取引を行う旅行会社のこと。楽天やじゃらんなどが有名。
※法的に定められるような明確な基準はないです。

全体像としては、主要な旅行会社全体で4.4兆円の売上(取扱高/2015年度)です。
※主要会社とはTTA30社ほどにOTAで楽天のみを含んだもの。大きなところでいうとじゃらんだけ含まれていません。

これは取扱高なので、航空会社や宿泊施設に支払われるお金もこの中に当然入っており、実際に旅行会社に残るお金(粗利益)は10~15%ほどです。すなわち原価90%ほど。この残りの10%から広告費や人件費など出していくので大変です。代理店業なので営業利益率は平均1~3%ほどになります。

▼主要旅行会社の2016年3月度の売上区分


出典:観光庁
国内旅行のなかでも旅行会社の花形商品となる募集型企画旅行(パッケージツアー)の取扱高の推移。人数は減っていますが取扱高は増加しています。

この数値は1回の旅行あたりの宿泊数が伸びて、単価が上昇したと考えられます。円安の影響で海外旅行が減少するとともに、海外旅行の代替として国内旅行に行く機会が増えたことが起因して国内旅行宿泊数が伸びていっています。

通常旅行会社の分析

各旅行会社の紹介をはじめ丸前に、まず下記セグメントに分かれる会社が多いです。

国内旅行個人・国内旅行団体(法人含む)
海外旅行個人・海外旅行団体(法人含む)
訪日観光

いずれかのみに特化した会社もあります。

大手旅行会社に共通する特徴としては、

各会社が鉄道・航空会社と契約。

インターネットとリアル店舗の両立が大半。

阪急交通社のように他業種大手会社の旅行部門として存在する会社も多いです。

その他、BTMやMICEに特化している会社も多いです。

▼BTM(Business Travel Management)
企業の業務のなかの、特に出張手配とその周辺業務において最適なソリューション(課題解決策)を提供するものです。航空券等の手配から精算、経費や旅費規程の管理、購買プロセス等を一元管理。

▼MICE
企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベント の総称。国内旅行よりは訪日がメインとなる。

旅行会社約1万社の中でTOPの規模を誇るのはイメージ通りJTBグループ
グループ会社156、社員26000名、売上高1兆3437億円(2015年度)というどんでもない規模です。営業利益は161億円で利益率は1.2%となり、この数値が旅行会社のベースとなっています。観光業界の中でも旅行会社は特に利益率が低い。その分自社で何も有形資産を持たずリスクも回避しているので、参入障壁も低いです。

2006年より地域や専門領域ごとに分社化する新グループ経営体制となっており、部署別に会社が分かれています。国内と海外旅行の売上シェアはほぼ同等です。個人旅行の方が法人より1.8倍ほど高くBtoCがメイン事業です。

第2位の売上高を誇るのはHIS。大手旅行会社の中でもダントツで利益率が高く、収益好調、5年連続過去最高更新しています。
収益のうち75%が海外旅行で、海外拠点も200以上ありアウトバウンドに強い。特にハワイに注力。テーマパーク事業など多角的に扱うことが特徴的です。

続いて、KNT-CTホールディングス。第3位の割には聞きなれない名前の会社だと思いますが、近畿ツーリズムとクラブツーリストが合併した会社です。近ツーはメイト・ホリデーのブランド販売を続け、CTは趣味やバリアフリーなど、テーマのある独創的な商品企画力を推しにしています。

KNT-CTと同規模が日本旅行です。古くからJRとの結びつきが強くJR商品が豊富です。国内旅行の方が海外旅行の2倍ほどでメイン。JR駅構内にも支店が多くあり誰もが名前を知っている国内旅行の老舗店ですね。

総合旅行会社と異なり、一つの地域に特化した会社も大手の中でもあります。例えば、沖縄ツーリストは名前の通り沖縄の企業で、沖縄県発着を中心に個人旅行を取り扱っています。添乗員付ツアーもあり。台湾への海外旅行、及びアジア諸国を中心とした訪日観光も注力し幅広いです。最大の特徴は北海道含めOTSレンタカーというレンタカー会社を持っていることです。沖縄・北海道ではメジャーなレンタカーとなっており業績も好調です。

総じて言えることは、ほとんどの大手旅行会社が今狙っている行動は、

自社ブランドのツアーのブランディング力向上。

インターネット販売強化していて、オンライン比率を伸ばしたい。

ターゲットを明確にした商品作り。

(一部、)訪日事業参入。

今後パッケージツアーの利用者数減を見込んで、ホテル単体の販売サービスを始めている会社もちらほら出てきています。

各主要会社約30社の詳細分析はこちらを参照ください。

旅行会社一覧!国内旅行の取扱シェアのランキング・各社特徴を徹底解説!

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OTA(ネット専門)の解説

宿泊施設や運輸におけるOTA取扱高推計値 約1兆1000億円(2013年度)

OTA比率 約40%
(1兆1000億円÷オンライン販売額2兆9000億円)

鉄道(新幹線)のOTA比率 6%  OTAシェア最小

宿泊施設のOTA比率 75% OTAシェア最大

楽天トラベルを筆頭にホテル販売サイトは非常に多く、さらにホテルは1社1社が大きい分けではないので自社でサイト販売に注力する体力もなく、ほとんどがOTAなどを介した予約となっているのが現状です。一方、鉄道はたしかに直接JRで購入することが多いですよね。

2013年度 OTA総販売額 1兆5,699億
2011年度 OTA総販売額 9,895億円

上記数値は宿泊施設と運輸のみの取扱高だが、この数値は現地アクティビティなども含む。2011年度から2013年度で約5割以上増加しています。すごい伸びです。

OTAはダイナミックパッケージツアー(DP)に注力しているところも多いです。
まずは、OTAの2大勢力である楽天トラベルです。

2014年度末 楽天トラベル
予約流通額6380億円 売上収益 372億円 営業利益 155億円
  (流通額・・予約受付ベースのキャンセル前取扱高・消費税込)

楽天自体の売上高は7000億円 (数値は取扱高ではなく収益ベース)。日本初のOTA「ホテルの窓口」を買収して楽天トラベルとなり、現在国内登録宿泊施設数NO.1になっています。ANAのダイナミックパッケージツアーに強い。

[数値の見方について]ですが、
TTA旅行会社の方は取扱高を売上としているところが多いですが、楽天やじゃらんも含め実際の手数料収益を売上高としているところが多いです。

続いて2大勢力のもう一つ、リクルート社運営のじゃらんです。

2014年度 じゃらん
取扱額6891億円  売上高 534億円(10%増)

楽天トラベルとほぼ同等の国内No.1OTA。情報雑誌の販売。じゃらん.netはDPと宿予約がメインです。
リクルート自体の売上高は1兆5886億円です。旅行先でのアクティビティの予約ができる「遊び・体験予約」サービスを2015年7月に開始しています。

他におさえておくべきは、i.JTB
JTBのWeb販売はすべ株式会社i.JTBが運営している。取扱高1974億円でグループ全体売上の約15%

るるぶトラベルも株式会社i.JTBが運営で、JTBの売上や利益の中に含まれています。たまに知らない人もいますが、るるぶも実はJTBの媒体なんです。るるぶとJTBサイトでホテルとの契約体系は異なり、完全に別サイトではあります。

その他、最近伸びてきているのは、2015年にヤフーに買収され、高級旅館のみを紹介する宿泊予約サイト「一休」。Loco Partnersが運営する一流ホテル・旅館に特化した宿泊予約サイト「relux」、スカイゲートから社名を変更した「DeNA」トラベルなど。

主要OTA11社の詳細分析はこちらを参照ください。

OTAとは?オンライン旅行予約サイトの市場分析!楽天、じゃらんなど代表的企業の分析付!

前回の記事で主要旅行会社の全体数値、及び各社の動向・特徴について記述していきましたが、今回は主要OTA(ネット専門の旅行会社)について記述していきます。 OTA(Online Travel Agent ...

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海外企業OTAの解説

一度は名前を聞いたことがあるだろう外資系OTAも本格的に日本への参入を強めてきています。2020年現在はExpedia・Booknngグループ・Trip.com(旧Ctrip)が売上高の3強となっています。

世界的に訪日ブームになったことで世界的企業の各社が日本により注力してきているのは確かです。なんといっても1つ1つの会社規模が半端ない。

Expedia取扱額世界一位のOTAです。収益も時価総額も後述のプライスラインの方が高いですが、Expediaは航空券付ツアーが多いため単価高め。
2015年の取扱高は504億ドル、営業収益は57.6億ドル、営業利益が5.2億ドル。1ドル110円換算でも、取扱高5.5兆円超という、、、凄まじい数字。

Expediaには日本語サイトありのグループ企業は以下の4つがあります。

ホテルズドットコム(ホテル予約。本社:ダラス)
トリバゴ (ホテル予約メタサーチ運営。本社デュッセルドルフ)
HomeAway(バケーションレンタル。本社:オースティン)
Venere.com(ホテル予約。本社:ローマ)

トリバゴは単体で日本でもCMを始め、注目度があがってきていますね。

トリップアドバイザー
もかつてはExpediaのグループ企業でしたが独立しました。

Expediaと凌ぎを削る2大勢力がBookingGroupです。
日本人には馴染みのない名前ですが、規模的にもアメリカではすごく有名な企業です。
世界の旅行会社で収益&時価総額No.1、つまり世界でもっとも評価されている旅行会社です。

2018年にPriceline GroupからBoooking Groupへと名称変更しました

2013年データで取扱額392億ドル、営業収益68億ドル、営業利益24億円。1998年設立のプライスラインドットコム社も傘下となりプライスライングループに6つの企業が所属している形態になっている。

BookingGroupのグループ会社

ブッキングドットコム 2005年に参画
カヤック       2013年に参画
アゴダ        2007年に参画
レンタルカーズドットコム 2010年に参画
→レンタカー予約
オープンテーブル   2014年参画
→米国中心にレストラン予約
プライスラインドットコム  1998年創設
→グループ企業中唯一の日本語未対応

中でもブッキングドットコム(Booking.com)はプライスライングループ全体収益の67.3%を占め、知名度・規模ともに一番の会社でありサイトです。海外OTAの中で日本語版サイトを初開設(2005年)したのもBooking.com。宿泊施設と利用者の直接契約となります。出張用のサービスを開設し、市場規模全体の20%を占めているビジネス旅行分野の強化をすすめています。

続いて、Agodaも日本での存在感を強めていっています。ホテル検索の地図機能が便利で実際に僕もホテル探しに用いています。予約は別のところですることが多いですが。アゴダの決済はBooking.comと異なりアゴダに対しての前払い決済とななります。

旅行商品の比較サイトであるKayacも、特に欧米で人気が高く注目のメタサーチです。

またおそらく海外OTAの知名度で日本国内No1サイトはTripAdvisorでしょう。口コミ・料金比較サイト、及びメタサーチ。旅行系のサイトでアクセス数No.1。2005年にExpediaから独立し、現在は単体の会社として成立しています。

2015年データで売上高15億ドル、営業収益2.3億円と前述の2グループに比べると規模は落ちているように思えますが、各掲載ホテルによるクリック単価制の収益モデル、すなわち広告業であり手数料が取扱高となるので低くなって当たり前ではあります。2億超の口コミ数の影響力は計り知れません。

その他、日本国内で注目すべき海外OTAはskyscannerTRAVELZOOですかね。スカイスキャナーは航空券が主体の旅行商品全般のメタサーチでマネタイズはクリック課金制です。Yahoo Japanと連携強化しており日本市場での存在感は大きくなっていっています。

TRAVELZOOは今までの予約サイトとは異なり、旅行商品販売は行わずにメルマガなどの情報提供のみを行います。実際にスタッフが確認作業を行い、「真の良質な情報を届けること」に注力することで、2800万人の会員数にまで。日本語版のメルマガ登録していますが情報の質の高さ・信頼性は非常に高いです。

その他海外OTA企業&海外大手旅行会社の詳細記述はこちらを参照ください。

海外の旅行会社まとめ!外資系OTAを代表する3つのグループ企業の実態

海外OTA企業の中で日本国内での動向が目立つ企業、今後日本での存在感がより強くなる可能性があるサービスを紹介していきます。 世界旅行業の大枠をおさえるために最後にOTA以外の世界の超大手企業4社の概要 ...

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旅行業界の現状:旅行比較サイト

旅行に行こうとなったときに、最初に見るのが旅行商品比較サイトだという方も多いと思います。特別好きな特定の旅行会社などがない人は、googleなどの検索エンジンで「セブ島ツアー 安い」などと検索する人も多いでしょう。

単体の旅行会社やOTAのサイトではなく、複数の会社の商品を掲載した比較サイトがでてきます。そのサイトの中で複数社のツアーの内容比較・料金比較ができるとても便利なサイトです。さらに料金安い順の並び替え機能などもあり、比較サイト内で料金勝負ともなっているので、各旅行会社も自社サイト内のツアーより安い値段で提供していることも多々あります。

急激にというわけではないですが、比較サイトの規模も徐々に大きくなっています。もちろんパッケージツアーの比較だけでなく、ホテル単体予約・航空券単体予約の比較などもあります。

メジャーどころでいうと、ツアー・ホテル・航空券の比較サイトのトラベルコ。成果報酬型がメインで月間300万UU。訪日用の比較サイトも展開していっておりベンチャー感がかなり強い会社オープンドア(上場済)が運営しています。

同じくツアー・ホテル・航空券の比較サイトとして知名度高めなサイトがTravel.jp。「たびねす」というブランド名で全国各地の観光情報発信も行っており、株式会社ベンチャーリパブリックが運営。同社が運営するホテル予約に特化したクチコミ・比較サイト「Hotel.jp」も要チェック。

Trabel.jpは2018年にLineグループに入りサービス名をLineトラベル.jpに変更しています。

その他、Yahoo!トラベルフォートラべルが主要ところです。Yahoo!トラベルはヤフーとJTBの合弁会社たびゲーターが運営しておりJTB色も入っています。2015年にダイナテック・一休と2社の大手企業の買収を行い、比較サイトのみならず、直販にも力を入れ始めています。

ツアー・ホテル予約の比較サイトの詳細分析はこちらを参照ください。

どう違う?旅行比較サイトを徹底比較![2019年版]

旅行会社やツアーの中で安い商品を見つけるために多くの人が利用するのが旅行商品の比較サイトです。その主要比較サイトの特徴を記述していきます。 目に触れる機会が多いので一般ユーザーへの認知度も高いサービス ...

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旅行業界の現状:運輸業

宿泊旅行における目的地までの移動手段の二大勢力は鉄道と飛行機となりますが、どちらの方が利用されているのか?
新幹線利用者数は航空利用者の3倍以上おり、消費額は約2倍となっています。実際の区間として東京〜大阪間でみると飛行機は15%のみ。

さらに航空利用者数は肩下がりにありますが、新幹線利用者数は近年さらに増加しています。北陸や北海道新幹線など新たな開通も影響していると思われます。

運輸業全般の販売状況としては、オンライン上での国内サプライヤー販売分の直販比率は60%です。オンライン比率は航空会社が最大です。

航空会社  オンライン比率46%  1兆244億円
宿泊施設  オンライン比率32%  1兆1816億円
高速バス  オンライン比率39%  2352億円
レンタカー オンライン比率18%  444億円

オンライン上での直販率は新幹線が最大で、宿泊施設が最小。新幹線においては比較サイトなどもなくJR一社なので直接購入するケースが一般的となります。
直販以外とは旅行会社パッケージツアーやOTAや比較サイトを利用した販売ということになります。

航空会社(LCC含む)

日本の航空会社は限られた数しかありません。中でも航空会社の2大勢力はもちろん日本航空(JAL)全日本空輸(ANA)です。加えてLCC会社も国内市場にも大きな影響を与えております。

JALは取扱高でANAに劣るが、会社更生後の経営のスリム化の成果で収益は大幅に勝っています。2015年度実績は売上高1兆3337億円、営業利益2092億円

取扱額はほぼ同等ですが、旅客数は国内:国際=8:2で完全に国内メインです。空港サービス・ダイナミックパッケージツアー商品強化中。株式会社ジャルパックはJALの飛行機を用いたパッケージツアー販売を行い旅行会社として機能しています。売上高などの数値にはジャルカードなどの数値も含まれています。

ANAは、利益率はJALの半分ですが取扱高は航空会社No.1。旅客数は国内:国際=84:16で収益も国内の方が中心です。バニラは完全子会社で、ピーチなどの筆頭株主も務め、スカイマークも傘下に。他業種含め他企業との連携強いことが特徴的です。

2019年にバニラエアはPeachに完全統合することとなり、バニラエアのブランド自体が消失します

その他2大航空会社に比べると規模は落ちますが、主要な航空会社として挙げられるのは、まずスカイマーク。日本の航空産業の規制緩和によって新規参入できた最初の航空会社です。
CAミニスカート問題からエアバス契約破談など何かと話題が多いですが、2015年に会社厚生をし、ANAの傘下となりました。その他、九州・沖縄をメインとしたソラシドエアなど各エリアに特化した航空会社も複数あります。

無視できない存在として、ピーチジェットスター春秋航空日本などの国内LCCも市場に大きな影響を与えています。低価格販売に加え、稼働率もそこまで高くなりにくいLCCなので実は採算を取れているところは少ないですが、飛び抜けて好調なのがピーチです。

ピーチはANAが筆頭株主の日本初のLCCで、珍しい関空拠点です。国内LCCのなかで唯一すでに利益が出ています。2013年時点で、売上高 305億円 営業利益 20億円。さらに就航率99.8%でNo.1に。

国内航空会社やLCC運営会社の詳細分析はこちらを参照ください。

航空会社一覧!国内の航空会社の特徴・業績を比較![LCCも合わせて徹底分析]

旅行運輸の中でも大きな取扱高を有する航空部門の分析をしていきます。国内の航空会社の一覧と、各社の特徴/業績の比較を徹底解説していきます。 まず規模感が分かりやすいように新幹線の市場規模と比較していき、 ...

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日本の空港について

移動手段とは少しずれる気もしますが、航空に付随して空港に関しての記述もします。
日本の空港は全部で101個。空港の種類は4つに分けられ一般的に用いられる空港は拠点空港といいます。主要4つのみ民間会社管理で、他は国や地方が管理しています。日本は面積あたりの空港数が多く総じて採算を取りづらい状況になっています。

各空港の2014年の旅客数を比較すると、東京(羽田・成田)2つの次は北海道、福岡、関西の順に旅客数が多いです。11番以降は熊本、長崎、宮崎、松山、広島、神戸、石垣。関西は関空と伊丹の2つの空港に割れています。

成田、関西国際のみ国際線利用メインで、国際線旅客の方が多いです。中部は国際と国内が同数ほど。他は圧倒的に国内線が多いく、伊丹のみ国際線は0です。

羽田空港は旅客数がだんとつ日本1位であり、さらに世界4位の空港です。他の多くの空港同様に、1日の発着可能枠は航空会社ごとに決められており、2005年の見直しで大手2社は不利になりました。この発着可能枠によって航空会社の業績は大きく左右されます。

主要空港についての運営状況や業績などの詳細についてはこちらを参照。

日本の空港一覧!地域別の空港数と各空港の特徴を徹底解説!

航空会社の動向を分析する上で欠かせないのが空港です。空港の規制や各特徴が大きく航空ビジネスにも影響します。 日本の空港の種類や数など全体像についてまとめ、空港の規模を比較しています。利用客数上位の主要 ...

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 JRを中心とした鉄道業

新幹線を運営するJRに特化して記述します。JRは奥が深い。1987年よりエリア別に6つの会社に分かれ、JRが民間化されました。
東日本、東海、西日本は純粋民間で上場済。北海道・四国・九州は特殊会社。会社間の資本関係など一切なしなので、他エリアの新幹線を販売した場合など、手数料収益なども発生しています。

6社の中でもっとも売上高が高いのは東日本旅客鉄道株式会社、すなわちJR東日本です。2兆8672億円の売上高に、4878億円の営業利益(2015年)です。旅行者はあまり関係なく、関東地方の在来線収入が主です。
新幹線は東北新幹線(東京駅-新青森駅)、上越新幹線(大宮駅-新潟駅)、北陸新幹線(高崎駅-上越妙高駅)の3つを管轄。「びゅうトラベルサービス」として自社での旅行商品販売にも注力。

一方、JR東海東海道新幹線が主な収益であり、在来線収益は1割もありません。取扱高は東日本より低いですが6社の中で営業収益はもっとも高いです。東京-大阪間をつなぐ東海道新幹線があるので大きいです。自社でトーキョーブックマークなどの旅行サイトを運営して新幹線パッケージ商品の販売に注力しています。

JR西日本は関西・中国地方エリアの在来線、山陽・北陸新幹線を管轄。関西は私鉄大国であり在来線経営難しい。北陸との相互送客に取り組んでいます。

JR北海道に関しては、2016年に開通した北海道新幹線はまだ財務的負担であり、在来線も競争激しい&過疎で難しい。旅行商品販売は大体、JR東日本と提携しています。

JR九州は九州新幹線に加え、独自の観光列車を多角的に投入しわりと好調。2016年に特殊会社ではない民間会社となった、上場準備中。

JR四国は唯一新幹線の保有無しで高速バスにも力を入れています。

JR各社についての詳細分析はこちらを参照。

JRグループの動向や売上が5分で分かる!国鉄分割民営化後の体制と影響

飛行機と並び2大移動手段である鉄道。東京ー大阪区間でみると、新幹線:飛行機=85:15となっており、新幹線利用者の方が圧倒的に多いです。 当記事では、国内移動において重要な役割を担う新幹線を運営するJ ...

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レンタカー市場について

2014年レンタカー市場規模は6,350億円(前年4.1%増)-ユーザー支払金額ベース

2014年の内訳

個人向け需要 2,350 億円 (うち、訪日外国人利用は80億円)
法人向け需要(代車需要を含む) 4,000 億円

市場規模は増加傾向にあり。訪日外国人による個人需要、建設に伴う車両の法人需要ともに増加予想。
沖縄は特にレンタカー市場伸びている。パッケージに含まれることや車両数が増加したという供給側の要因に、リピーター増及びネット予約増という需要面の要因もあり。

レンタカー会社は結構多いですが、保有台数、店舗数で日本一を誇るのがトヨタレンタリース。全国の63のレンタリース運営会社が店舗運営をしています。
その他規模で言うと、日産レンタカーニッポンレンタカーサービスなどが後を追います。

スカイレンタカー(沖縄・九州・北海道)、OTSレンタカーなど地域に特化したレンタカー会社(沖縄・北海道)も目立ってきています。

少し余談になりますが、2014年カーシェアリング市場規模はユーザー支払金額ベースで 154億円(前年45.3%増)となっています。カーシェアリングはレンタカー以上の伸び幅で上昇中。既存の駐車場の空きスペースなどを用いて発展中。

各レンタカー会社の特徴、業績・動向についての詳細分析はこちらを参照。

レンタカー業界の市場分析!レンタカー会社一覧と各社の特徴・戦略まとめ!

旅行中に大活躍する、エリアによっては必須ともなるレンタカー。もちろん旅先までの移動手段として利用されることも多いです。そんなレンタカー業界の市場全体動向と主要レンタカー会社の特徴を記していきます。 各 ...

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旅行業界の現状:宿泊施設

日本人宿泊者数は微減しているが訪日効果で全体では増加。市場規模も増加中。2014年の市場規模は3.8兆円。上位企業によるシェアは非常に少ないです。ビジネスホテルのみオンライン比率が50%越え。

タイプ別のホテル分析

空室のままで0となることが一番のリスクであり、ホテルはとにかく稼働率が重要です。全体稼働率上昇中で60%ですが2010年時よりはまだ低いです。シティホテルの稼働率が80%でトップ。月別の稼働率としては8月のみ稼働率70%越え、他は7.10.9月の順に高くなります。

県別の人泊数をみると、上位10都道府県で過半数の人泊数を占めます。東京・大阪周辺地域、北海道、長野、愛知、福岡、沖縄が高い。

各ホテルの簡単な定義を記しておきます。

シティホテル
都市の繁華街に立地する大型ホテル。いわゆる有名一流ホテルと称するものの多くはこれに入る。料金はビジネスホテルに比べて高めに設定されている。シティホテルは宴会場ありツインルームが多い可能性が高い。

ビジネスホテル
都市の繁華街に立地する、主に業務出張客の宿泊を想定した比較的小型で低料金のホテル。同一グループチェーン展開多い。ビジネスホテルはシングル多め。宿泊特化型ホテル増えている。レストランなどなくし人件費と光熱費の抑制、共有化&スケールメリットによるコストダウン。

リゾートホテル
温泉地、ビーチや高原などのリゾート地に立地する宿泊施設。観光客が主要な宿泊客となる。

旅館
日本ならではの和式の構造・設備のある宿泊施設のこと。日本の文化を感じさせるようなサービスが特徴的で細やかな心遣いをしてくれることも多い。

例えば航空会社だと主要会社と言えばJAL・ANAなどと主要会社が決まっていますが、ホテルに関しては数が多すぎることもあり、飛び抜けて市場を牽引しているものもはないです。
そんな中でも主要的なホテルとしてあげるならば、シティホテルでは御三家ホテル(帝国ホテル・オークラ・ニューオータニ)、新御三家ホテル(ウエスティンホテル東京・パークハイアット東京・フォーシーズンズホテル椿山(ちんざん)荘東京)などがメジャー。ブランド力高い。

ビジネスホテルでは、APAホテル・ドーミーイン・東横インなどが順調に拡大中。特にAPAホテルは知名度とともに規模・業績もかなり上がってきており、10年間以上毎月ベースで新店舗展開。2015年までの5ヶ年計画の数値も大幅に上回っています。会員の囲込み上手くリピート率も高めです。ホテル価格の決定権現場にあり。利益率30%確保などかなり革命的な数値・結果を出しています。

宿泊施設市場についての分析、各ホテルの特徴・業績などの詳細はこちらを参照。

ホテル業界分析!宿泊施設のタイプ別にみる市場規模とビジネス環境!

旅行消費の中で、航空などの移動費と並び2大消費額となっている宿泊施設市場について記載していきます。旅行のメインともなり得る部分なので、まずはホテル業界全体の市場規模を詳しくみていき、次にタイプ別宿泊施 ...

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サイトコントローラー

サイトコントローラーは、旅行業界従事者ではない人は聞いたことがないかもしれませんが、業界に入る人は必須で知っておかないといけない非常に便利なサービスです。
簡単に言うと、サイトコントローラーとは、複数のエージェント(旅行会社やOTA)に対して、ホテルの在庫や料金設定を一元管理できるオンラインシステムです。

従来オーバーブッキングを懸念して実在庫を複数あるネットエージェントすべてに販売できず、分散して少しずつ与えており結果的に機会損失が非常に多く発生しておりました。サイトコントローラーを用いると、すべてのネットエージェントに共通在庫を出せて一括で予約管理できるので、エージェント側も売りたいときにより多くの部屋を売りやすくなりました。

主要なサイトコントローは4つ。

TL-リンカーン・・サイトコントローラーの先駆け的存在で予約サイト側のシェアNo.1
手間いらず.NET・・比較.comが運営。Booking.comに推奨されています
ねっぱん!・・宿泊施設側のトップシェア。楽天と提携ホテルは無料になります。
イージーサイトコントローラー・・インバウンドに特化している。海外の予約サイト多い。

各ホテル1つのサイトコントローラーしか導入できないわけではないので、複数と提携しているホテルも多いです。

サイトコントローラーについての詳細分析はこちらを参照。

サイトコントローラーとは?宿泊施設と旅行会社を繋ぐ便利すぎるサイトコントローラーの一覧

伝統深い旅行業界の中では比較的新しい概念となるサイトコントローラーですが、今ではもう宿泊業界にとって欠かせない概念ですよ。ホテル側と旅行者側どちらにとっても機会損失を発生させない便利なシステムです。 ...

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民泊

Airbnbの調査によれば「民泊」の経済波及効果は日本国内で年間2220億円に達すると発表されています。そしてAirbnbの日本の市場規模は概算で400億円ほどと。
民泊は訪日向けが大半なので、民泊についての詳細は訪日観光の方で詳しく記載します。

株式会社スペースマーケットなど日本人向けをメインに民泊事業を実施しようとしているところも多数あり。

民泊についてはこちらを参照。

AirBnb以外にもある「民泊」企業分析!民泊業界の今を徹底解剖。

民泊の全体動向 この段落の要約 Airbnbの訪日利用客数は年間53万人とされ、市場規模は400億円ほど。民泊の法律は国家方針により徐々に規制緩和されつつある。現状制限なく営業するなら簡易宿泊所。 2 ...

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旅行業界の現状:現地アクティビティ

これまでは、目的地である旅先までの輸送部分、宿泊部分、及びそれらのパッケージツアー販売に関して記述してきましたが、実際の旅先での遊び部分に関して記述していきます。

現地でのコンテンツとなるので、種類は非常に多いです。分かりやすいもので言えばダイビングなどの海のアクティビティから、伝統文化体験などのカルチャーアクティビティもあります。現地コンテンツとしては各テーマパークも含まれますが、入場者数は横ばいです。

また近年は地域活性というワードとともに着地型観光への注目が増加中。着地型観光とは地域(着地)側が、その地域でおすすめの観光資源を基にした旅行商品や体験プログラムを企画・運営する形態で、地域主導の発信で行われることが多いです。

近年はこれらの現地コンテンツを集約して販売するWeb予約サイトが増えています。
知名度急上昇中のサービスの一つがASOViEW(あそびゅー )です。2013年リリースから2年で2430プラン掲載、月間数百万PVに成長。ヤフートラベルと提携。主催者に掲載料を取るが最低催行人数を確保でき、まとまった金額を徴収できるメリットもあり。

もう一つ急上昇中のサービスがアクティビティジャパン。幅広いアクティビティを予約できるサイト。2014/7サービス開始。2016年HISの子会社として新たに設立しています。あとはじゃらん.netもアクティビティ分野に本格参入しています。

世界的に知名度がもっとも高いこの分野のサービスと言えば、VELTRA(ベルトラ)ではないでしょうか?海外アクティビティがメインで始まった現地オプショナルツアーの老舗で2018年に上場しております。全世界商品数は14000件越え。うち、日本は4000個。訪日事業も含め国内商品も増加中です。

アクティビティではなく、地域の着地型観光に特化した「TRIP」なども特徴的です。Webの会社「LIG」子会社ということもありキャッチコピーなどユニークな目を惹くもの多いです。地域の人が自ら商品を作成し売買するサイト。作成者は無料でツアーを作成できるようです。これまた最近増えてきているCtoCガイドサービスですね。

現地アクティビティ市場についての詳細分析はこちらを参照。

注目度上昇中の着地型観光とは?旅行先での体験アクティビティを販売するサービス分析!

これまで別記事で旅行消費額のうちの大半を占める飛行機や新幹線といった移動手段、宿泊施設、レンタカー、及びそれらを販売する旅行会社やOTAについて記載してきました。 今回は旅先での体験・遊び部分のマーケ ...

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旅行業界の現状:観光情報

旅行に行く際の大事なフローの一つとして、移動手段や宿泊施設の予約後に発生する「観光情報収集」という領域があります。多くのニーズがある部分ですね。

単体でお金を生むのは難しい分野でもあるため、ツアー予約サイトなど他のフローで既存マネタイズを持つ会社が運営する観光情報媒体が多いです。知名度は得やすく、ブランディングまたは、観光情報をフックに自社サービスへの誘導を行うために、この分野に参入している旅行業周りの会社は多いです。

では従来通りの観光雑誌と、近年目立ってきたWeb観光メディアに分けて記述していきます。

観光雑誌

観光雑誌として誰もが知っている2大勢力「るるぶ」と「まっぷる」について。
るるぶは1984年発刊の雑誌で、発行点数で世界ギネス認定されています。あのJTBグループが発行している観光雑誌の先駆け的存在ですね。近年は自治体とのコラボなど力入れています。
一方、まっぷるは地図大手会社の昭文社が運営。国内だけで134件もあり。アプリ「まっぷるリンク」でオンライン旅行予約との連携も実施。

「るるぶ」は旅行会社のJTB、「マップル」は地図大手会社が運営ということで、掲載情報に関してもそれぞれの特徴が出ています。「るるぶ」は一つ一つの観光地は詳しい。対して「まっぷる」は有名な観光地の情報も割と載せ、さらにその周りのマイナーな観光地情報が「るるぶ」よりも多く網羅されています。

まっぷる運営の昭文社は実は観光情報業においてかなり大きな役割を担っています。女子の大きな人気を集めている「ことりっぷ」、国内30エリア分ある情報誌「たびまる」も昭文社が運営しています。同じコンテンツを切り口を変えてユーザーに届けられるようになっています。またことりっぷは若い女性がターゲットということでWebサイトやアプリ等のオンラインにも注力。

他には猫のイメージキャラクターを使用していることでよく知られている「じゃらん」も毎月エリア別の5つの雑誌を発行しています。

その他観光情報(雑誌)についての詳細分析はこちらを参照。

おすすめ観光ガイドブックまとめ!結局どれが良いの?観光雑誌を徹底比較!

旅行のなかでも非常に重要な分野、観光情報発信分野についてまとめていきます。宿の販売など実際に対価を与えられるものと異なり、情報という目に見えないものになってしまうため、観光情報単体でマネタイズすること ...

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 Web情報発信を行う観光メディア

観光情報発信メディアとしてPVを多く集めている2大勢力「FIND TRAVEL」・「Retrip」はリリースが2014年と比較的若いです。他分野のメディアからみても、とてつもない躍進率ですね。

FIND TRAVELはマネタイズは記事広告がメインの一般ユーザーによるキュレーションサイト。DeNAが買収しているが、DeNAトラベルとの強固な連動は見られませんでした。2014/8にリリースして1年間で月間UU1200万という驚異的な数値。

※2016年末にDeNAメディア群閉鎖のなかの一部としてFIND TRAVELもサービスを終了しました。

Retripは広告収入の一部が還元される仕組みの一般ユーザーのキュレーションサイトです。2014年6月リリースで1年半ほどで月間1400万UU

その他では旅行商品比較サイトのTravel.jpの姉妹サイトとして存在する「たびねす」も良質な情報と量が集まっています。観光情報から旅行商品に繋げるマネタイズです。各エリアの旅のプロライターが多く在籍しています。

その他はAll Aboutの旅行部門サイトや、JR各社が運営する各地域特化型の情報サイト「tokyo bookmark」・「myfavorite関西」などがあります。
各地域の行政が運営するサイトも、最近は力を入れて、見やすい有益なサイトが増えています。

その他観光情報(Webメディア)についての詳細分析はこちらを参照。

観光情報を発信するWebメディアまとめ!各サイトの特徴比較!

近年、急激に人気もアクセス数も伸ばしている観光情報発信Webメディアについてまとめていきます。Webで旅先エリアの観光情報を調べようと思ったとき、どんなワードで検索したしきも大体ここで紹介されているサ ...

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旅行業界の現状まとめ

約2万文字の大作で長くはなってしまいましたが、1記事で観光業界の全体像を把握できる記事を書いてみました。

国内旅行市場の全体像をセグメントに分け解説しています。各セグメントの代表企業分析や市場規模の詳細分析をした記事のリンクも各段落で紹介しています。興味があるジャンルについての細かい内容は各詳細記事を参照ください。

訪日旅行についての全体像分析についてはこちらの記事にまとめています。

【決定版】訪日旅行業界の動向まとめ!インバウンド観光ビジネスの全体像

当記事では、急成長をし続けているインバウンド観光ビジネスの全体像を掴めるように、セグメント別の訪日市場への取組みや実際の数値をまとめていきます。 市場として大きくなっていることは確かである訪日観光市場 ...

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